はじめに
先生方、毎日遅くまで本当にお疲れ様です。授業の準備、丸つけ、生徒指導、保護者対応……息をつく暇もない一日を終え、ほっと一息ついている方も多いのではないでしょうか。
突然ですが、研究主任や研修担当の先生、あるいはミドルリーダーとして学校を引っ張る立場の先生方に、一つ質問させてください。
今年の「校内研修」、どんなアイディアで進めようかと頭を悩ませていませんか?
「先生たちが退屈しないような、面白い企画はないかな?」「最新のICTを使ったワークショップを取り入れるべきか?」など、ネットで研修のアイディアを探している方もいらっしゃるでしょう。
しかし、少しだけ皆さんの学校の「いつもの校内研修」の風景を思い出してみてください。
放課後の図書室や会議室に集まる先生方は、ワクワクした表情をしていますか?
研修が終わった後に、「すごくためになった!」「明日、早く教室に行って子どもたちにこの方法を試してみたい!」という活気に満ちた声が飛び交っているでしょうか。
残念ながら、日本の多くの学校ではそうはなっていないのが現状です。
校内研修が「こなすもの」「やらされるもの」になり、完全に形骸化してしまっているという声があちこちから聞こえてきます。学校にいると1分1秒でも惜しい、自分のクラスの仕事を少しでも早く終わらせたい。
そんな極限状態の中で、学びにつながらない研修に参加するのは、はっきり言って苦痛以外の何物でもありません。
今回は、小手先のワークショップの手法や表面的な企画の前に絶対に知っておきたい、校内研修を劇的に変えるための「根本的なアイディア(マインドセット)」について、深く掘り下げてお話しします。

なぜ、新しいアイディアを導入しても校内研修は形骸化するのか?
ネットや教育書で「付箋を使った活発なワークショップ」や「ジグソー法を取り入れた研修アイディア」を調べて導入してみたものの、結局いつも通りのお通夜のような雰囲気になってしまった……。そんな苦い経験はありませんか?私はたくさんあります。
先生たち一人ひとりの普段の姿をよく見てみてください。
先生方は日々の授業や生徒指導において、実はものすごく真剣に悩み、すでに多くの工夫を凝らしています。
「この教え方で伝わるかな」「あの子にはこういうアプローチが良いかもしれない」と、毎日毎日、目の前の子どもたちのために改善を繰り返しているのです。
それほどまでに一生懸命で、向上心のある先生方が集まっているのに、なぜ「校内研修」という枠組みに入った途端に心が離れてしまうのでしょうか。
その最大の理由は、「研修すること(または新しいアイディアをこなすこと)」自体がゴール(目的)になってしまっているからです。
- 期限までに指導案の体裁を整えて提出すること
- とりあえずグループワークの形を作り、模造紙を埋めること
- 教育委員会や外部の視察に向けて、見栄えの良い報告書をまとめること
- 代表授業を「失敗なく」無難にやり過ごすこと
本来、これらはすべて「手段」に過ぎません。しかし、いつの間にかこうした表面的な業務を終わらせることが研修の「目的」にすり替わってしまっています。
手段が目的化したとき、人は「何のためにやっているんだろう?」「自分のクラスの目の前の子どもたちの役に立つの?」という疑問を抱き、一気にモチベーションを失ってしまうのです。

法律上の「建前」と、現場の先生たちの「本音」
そもそも、私たちは何のために校内研修を行うのでしょうか。
小難しい話をすれば、学校教育法や教育公務員特例法といった法律で「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に励まなければならない」と定められているからです。「法律で決まっているからやっているんだ」と言ってしまえばそれまでです。
しかし、現場の最前線に立つ先生方の「本音」の部分ではどうでしょう。
特別支援が必要な子、家庭環境に課題を抱える子、学習意欲が低下している子など、多様な子どもたちを目の前にして、
「自分の指導の引き出しをなんとかして増やさなきゃ」
「自分自身をアップデートしていかなきゃいけない」
と、切実な思いを抱えている先生は決して少なくありません。
むしろ、ほとんどの先生が「意味のある学び」の必要性を痛感しているはずです。
つまり、先生たちは「研修の必要性」自体は十分に感じているのです。にもかかわらず研修が形骸化するのは、向かっているベクトルが「子ども」ではなく「手続き」や「形」に向いてしまっているからです。
校内研修を変える一番のアイディアは「目的の再確認」
では、意味のある校内研修にするための最高のアイディアとは何でしょうか?
それは、最新のツールを使うことでも、奇抜なゲームを取り入れることでもありません。
「何のための手段なのか」という本来の目的を、全員で共有する仕組みを作ることです。
研修はあくまで手段です。何のための手段かといえば、学校教育目標で掲げている「目指す子ども像」を追求するためです。「うちの学校の子どもたちに、こんな風に成長してほしい」「こんな力をつけて卒業してほしい」というビジョンを実現するために、先生たちの資質向上が必要になり、そのための場として校内研修が存在します。
また、もう一つの重要な目的があります。
それは、先生たちが対話的にお互いの実践を語り合い、学び合うことで、「同僚性を高め、職員室のチーム力を底上げすること」です。
ですから、研修を企画する際のアイディアの核は、「どうすれば先生たちが、明日子どもたちに会いたくなるか」「どうすれば先生同士が本音で語り合える環境を作れるか」という一点に絞るべきなのです。

日常の「つながり」を研修に昇華させるアイディア
「校内研修」という言葉を聞いただけで身構えてしまうのは、それが日常の実践から切り離された「特別なイベント」になっているからです。
実は、学校現場における一番の学びの場は、日常の何気ない風景の中にあります。
放課後、職員室で隣の席の先生とこんな会話をすることはありませんか?
「今日、〇〇さんにこんな声かけをしたら、すごく良い表情を見せてくれたんですよ」
「あの場面での先生の対応、すごく参考になりました」
「実は今、あの子のことで悩んでいて……」
こうした「日常の教育談義(つながり)」こそが、生きた学びの宝庫です。この日常の延長線上に校内研修を位置づけるのが、最も効果的なアイディアです。
たとえば、研修の冒頭でこんな問いかけから始めてみてはいかがでしょうか。
「今日のこの研修の時間は、皆さんのクラスの『あの子』の成長にどうつながると思いますか?」
ただ与えられたテーマについて話し合うのではなく、具体的な子どもの顔を思い浮かべながら、隣の先生と最近の悩みを共有し合えるような時間をデザインする。
表面的なやり方ではなく、先生同士が実践を通してつながる時間を作ること。これが最高の研究成果を生み出す土台となります。

まとめ:最高のアイディアは「子どもたちが輝くための手段」という原点

研修は「教員の資質向上のため」と言われますが、資質向上もあくまで手段です。
その一番先にある「子どもたちが輝くため」という目的を、教職員全員がしっかりと見据えることが何より重要です。
「自分たちの資質向上が、あの子たちの笑顔のために必要なんだ」
「この研修は、自分のためではなく、目の前の子どもたちのためにあるんだ」
そう自覚するためには、先生同士が孤立せず、お互いの悩みや実践を共有して「つながる」ことが不可欠です。
毎日ものすごく忙しい中で、なんとかやりくりして作り出した貴重な時間です。だからこそ、日々の実践の糧となる、息の長い意味のある研修にしていきたいものです。
今回は、校内研修のベースとなる「考え方のアイディア」について書かせていただきました。
次回は、「では、具体的にどのような手法を使って研修の場をデザインすれば、先生たちがつながり、子どもたちのためになる時間になるのか?」について、私が実際に現場で行い、手応えを感じている実践例を具体的にお伝えしたいと思います。
次回の更新も、ぜひ楽しみにお待ちください!最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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