イベント報告

【開催報告】第3回 道徳発問作成会――「個性の伸長」の本質を問い直す――

イベント報告

はじめに:対話から立ち上がる道徳の「核」

2026年1月19日、道徳教育の実践家・中村先生を迎え、第3回「道徳発問作成会」をオンラインにて開催しました。

「正直」「努力」に続く今回のテーマは、内容項目A「個性の伸長」です。

近年、教員向け研修は知識伝達型に偏り、形骸化しているという課題が指摘されています。そうした中で本会が継続的に開催され、回を重ねるごとに熱量を高めている理由は、参加者自身が「問い」を共につくり上げる 参加型・対話型 の設計にあります。

優れた発問を一人で生み出すことには限界があります。多様な価値観が交差する対話の中で問いを磨き合うことこそが、教材の深層に迫るための欠かせないプロセスです。

本題に入る前には、教育現場全体のウェルビーイングに関わる最新の視点も共有されました。

特別セッション:チームで支える「働き方」の4つの柱

中村先生の新刊(1月30日発売予定)
https://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-146829-3
をベースに、教務主任・主任層に求められる「仕事の進め方」についての特別セッションが行われました。

最新のAIツール NotebookLM を活用した動画プレゼンを通して示されたのは、単なる効率化ではなく、組織全体の心理的安全性を高める視点 でした。

紹介された4つの柱は、個人の時短術を超え、チームのウェルビーイングを支える土台となるものです。

  • 先を見通す
     業務を4つのステップで俯瞰し、周囲に「安心」を配る
  • 人に頼る
     一人で抱え込む文化を手放し、雑談も含めて頼り合える関係をつくる
  • 進んで行う
     誰の担当でもない仕事を率先し、チームの一体感を育てる
  • すぐに行う
     今やるべきことを見極め、滞留を防ぐスピード感を持つ

【教育的視点から】
特に印象的だったのは「人に頼る」という視点です。他者を頼れない大人は、子どもに「自立した個性」を示すロールモデルにはなり得ません。主任層が名もなき仕事を引き受ける姿勢こそが、後に議論される 個性を尊重し合える安全な環境 の基盤となります。

こうして組織の土壌を整えた上で、いよいよ本題である「個性の伸長」へと議論は進みました。

テーマ理解の整理:学年段階別「個性の伸長」

発問を考える上で欠かせないのが、学習指導要領に示されている発達段階ごとの狙いです。内容項目A「個性の伸長」における段階的な変化を整理すると、次のようになります。

  • 小学校1・2年
     自分の特徴に気付く(素朴な自己発見)
  • 小学校3・4年
     特徴に気付き、長所を伸ばす(肯定的な自己概念)
  • 小学校5・6年
     短所を見つめ、長所を伸ばそうとする(客観的内省)
  • 中学校
     個性を生かし、よりよい生き方を追究する(自己実現)

低学年の「気付き」から、高学年の「短所を改める」への移行は、自己を客観的に捉え、主体的に更新していく力の深化を意味します。その内省を支えるためには、他者からの受容が不可欠です。

この整理を土台に、参加者のリアルな感覚が「個性」という概念をさらに広げていきました。

対話から見えた「個性」の多様な捉え方

チャット欄は、まるで職員室のように率直な声が飛び交う場となりました。
「個性とは何か」という問いに対しては、次のような視点が共有されました。

  • 環境によって育つもの
     「置かれた環境でたまたま発達したもの」「比較の中で意識されるもの」
  • 生まれ持ったもの
     「生得的な性質」「どうしても譲れない自分の軸」

【教育的整理】
ここで浮かび上がったのは、「先天的か/後天的か」という二項対立です。
個性を環境によって育つものと捉えるなら、教員には 環境を設計する責任 が生じます。一方、生得的なものと捉えるなら、教員の役割は 発見し、承認すること へと重心が移ります。

現場の教員は、この両者の間で揺れ動きながら、子どもの個性と向き合っているのだという実感が共有されました。

核心的な問い:個性が発揮される環境とは

Tさんから投げかけられた
「個性を発揮できる環境とはどのようなものか」
という問いを起点に、議論は環境条件へと集約されていきました。

  • 発揮されやすい環境
     否定されない安心感/違いが認められる雰囲気/目標の共有
  • 発揮されにくい環境
     過度な規則/暴力的な支配/同調圧力/役割の固定化

議論の焦点となったのは、「わがまま」と「個性」の境界線でした。
個性の尊重とは、何でも許すことではありません。その分かれ目は、「社会に役立てようとする自己有用感」 があるかどうかにあります。

自己満足に留まるものはわがままに終わります。しかし、自分の特徴を誰かのために生かそうとする意志が加わったとき、それは 伸ばすべき個性 へと変わります。

実践へのヒント:中村先生に学ぶ発問の構え

終盤では、中村先生の発問づくりの実際が語られました。
議論中には、家庭でのハプニングや話題が環境論(内容項目C)に寄りすぎる場面もありましたが、そこで中村先生は巧みに軌道修正を行いました。

あえて 内容項目A(自分自身) に立ち返り、
「自分はどうするか」「自分の特徴をどう捉えるか」
という問いへと場を引き戻したのです。

中村先生は、
「良いところを伸ばしたいのか、苦手を減らしたいのか」
「苦手なことも個性と言えるのか」
といった多様な問いを事前に準備していました。
この 引き出しの多さ が、ライブ感のある授業を支えていることが伝わってきました。

最後に紹介された、4年生の児童の振り返り――
「人と比べる必要はない」
という言葉は、「あなたはあなたの道を行けばいい」という言葉と重なり、問いの力が子どもを本質へ導くことを改めて実感させてくれました。

おわりに:コミュニティ『ジーニー』のこれから

教員コミュニティ『ジーニー』は、
「職員室では話せない話ができる場」
として、利害関係を離れた対話の場を提供しています。

道徳に唯一の正解がないように、教員の生き方や実践にも正解はありません。だからこそ、問いを共有し、揺れながら考え続ける仲間の存在が、教育者としての軸を磨いてくれます。

今後も内容項目ごとの発問作成会は継続予定です。
次はどんな問いが生まれるのか——その探究は、すでに始まっています。


【教員コミュニティ「ジーニー」について】
学級経営、授業改善、キャリア相談などをテーマに、対話を中心としたイベントを毎週開催。全国の教員がフラットにつながり、明日への一歩を支え合うコミュニティです。

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