◯この記事はこんな先生におすすめ
なぜ学級目標は「ただの掲示物」になるのか
4月。
みんなで話し合って、学級目標を決める。
「挑戦」「協力」「笑顔」「思いやり」
子どもたちから出てきた言葉をつないで、学級目標が完成する。教室に貼って、
「この目標に向かって一年間頑張ろう!」
そして、数か月後。
……誰も見ていない。
そんなこと、ありませんか?
正直に言うと、僕もありました。
学級目標を「つくること」で満足してしまう。
でも、今はこう考えています。
学級目標は、つくってからがスタート。
なぜなら学級目標は、
自分たちのクラスを、自分たちでよりよくしていくための道具
だからです。
そもそも、クラスは「ただ集められた集団」である
少し乱暴な言い方をします。
4月のクラスは、まだ「仲間」ではありません。
たまたま同じ地域に住み、同じ年齢で、同じ教室に集められた。
自分でメンバーを選んだわけではありません。
それなのに、
「仲良くしよう!」
「協力しよう!」
と言われても、
「いや、なんで?」( ´Д`)y━・~~
となっても不思議ではありません。
だからこそ、
「自分たちは、どんなクラスになりたい?」
をみんなで考える。
ただ集められた集団が、少しずつ**「自分たち」**という感覚をもった集団になっていく。
学級目標には、そんな役割があるのだと思います。
ただ、目標を決めただけでは変わりません。
大切なのは、
「今の自分たちは、その目標にどれくらい近づいている?」
と問い直し続けることです。
学級目標を「振り返れる言葉」にする
「達成されたらどんなクラス?」と問い直す
以前担任していたクラスで、学級目標を決めた後、こんなことを聞きました。
「この目標が本当に達成されたら、どんなクラスになっている?」
すると、
「いろいろな人と関われる」
「困っている人を助ける」
「みんなで協力する」
「一人ひとりが活躍する」
など、具体的な姿が出てきます。
出てきた言葉を3つの観点にまとめる
それらを子どもたちと整理して、
「人とのつながり」
「協力」
「一人ひとりの活躍」
といった観点にまとめました。
「いいクラスにしよう」だけでは、振り返れない。
「いいクラスって、具体的にどんなクラス?」
まで考えることで、学級目標が自分たちを見るための「ものさし」になります。
学級経営の振り返り方|「今の俺たちは何点?」と考える
月1回、Googleフォームで振り返る
そこから、月に一度クラスを振り返ります。
僕はGoogleフォームを使うこともあります。
それぞれの観点を段階で評価し、
「なぜ、その点数なの?」
そして、
「もっとよくするために、自分には何ができる?」
と聞きます。
この最後の問いが大切です。
「クラスがよくない」
「あの子がやってくれない」
で終わらせず、
「じゃあ、自分には何ができる?」
と考える。
これらの3つの問いで聞くんです
クラスの問題を
「誰かの問題」から、「自分も関わっている問題」へ変えていくんです。

数字は「評価」ではなく「対話の入口」
全員の回答を集めると、教師が見ているクラスと、子どもが見ているクラスが違うことがあります。
だから結果を子どもたちにも返します。
そして聞く。
「これ、どう思う?」
「思ったより高い」
「前よりよくなった」
「でも、この場面ではできてないよね」
そこから、
「じゃあ、もっとよくするために何ができる?」
と問いをつなげる。
教師が課題を決め、教師が改善策を教えるのではありません。
データを真ん中に置いて、子どもたち自身が自分たちのクラスを解釈する。
数字はクラスを格付けするためのものではなく、
自分たちについて話すための共通言語なんです。

続けた先に起きた変化
学級目標が「日常の言葉」になった
続けていくと、変化が起こりました。
あるとき、準備が遅れている友達に、
「みんなで協力していこうよ」
という趣旨の声をかける子がいました。
何気ない一言です。
でも、僕にとっては印象的でした。
「協力」という学級目標につながる視点が、掲示物ではなく、
子どもたちの日常の言葉になった
からです。
さらに学級会でも、
「今のクラスの課題をよくするために、みんなで協力できる活動をしたい」
という趣旨の提案が出るようになりました。
教師が、
「もっと協力しなさい」
と言ったわけではありません。
子ども自身が、
「今の自分たちには、ここが足りない。じゃあ、自分たちで何かやってみよう」
と動き始めたんです。

クラスの「自己調整サイクル」が回り始めた
今、教育では「自己調整学習」という考え方があります。
自分の状態を振り返り、目標とのズレを捉え、方法を考え、実行し、また振り返る。
僕は、あるとき思いました。
これ、クラスでもできるんじゃないか。
「どんなクラスになりたい?」
↓
「今の俺たちはどう?」
↓
「何が足りない?」
↓
「じゃあ、どうする?」
↓
「やってみよう」
↓
「どうだった?」
僕はこれを、「クラスの自己調整」と捉えています。
学級目標は、そのための「基準点」です。
このサイクルを繰り返していくと、最初は教師が中心になっていた目標設定や振り返りも、少しずつ子どもたちが考えるようになっていきました。
つまり、
「先生がクラスをよくする」から、「自分たちでクラスをよくする」へ。
クラスづくりの「主語」が変わっていったんです。

やってみてわかった注意点
「任せる」と「放任」は違う
もちろん、うまくいったことばかりではありません。
「いいクラスにしたいから、高い点数をつけたい」
という気持ちが生まれることもありました。
改善策を考えても、「声をかける」ばかりになってしまうこともあります。
子どもに任せれば、自然と自治的なクラスになるわけではありません。
教師が、
「他にはどんな方法がある?」
と問い返したり、新しい経験をつくったりする。
任せることと、放任することは違う。
子どもが自分で考えるための支援は必要です。
「自分たちで変えられる」という経験を
僕が一番大切にしたいのは、数字が上がることではありません。
「自分たちの働きかけで、クラスを変えられた」
と感じることです。
学校には、子どもたちが自分では決められないことがたくさんあります。
だからこそ、最も身近な社会であるクラスくらい、
「自分たちの働きかけで、よりよくすることができる」
という経験をしてほしい。
「先生がなんとかしてくれる」ではなく、
「俺たちで、なんとかできるかもしれない」
と思える。
僕は、これは単なる学級経営ではなく、小さなシチズンシップ教育でもあると思っています。
「このクラスは、先生がつくるものではない。自分もつくっている一人なんだ。」
そんな当事者意識を育てたいのです。

明日、一つだけやるなら
大掛かりなGoogleフォームをつくる必要はありません。
明日の帰りの会、教室に貼ってある学級目標を指さして聞いてみてください。
「今の俺たちって、この学級目標にどのくらいくらい近づいていると思う?」
「点数をつけるとすると、何点?」
30点。
50点。
80点。
答えは、きっと分かれます。
そこで
「なんでそう思った?」
と聞く。
そして、
「じゃあ、もう少し近づくために、俺たちに何ができる?」
と続ける。
そこから始めれば十分です。
学級目標は、4月に完成するものではありません。
何度も振り返り、問い直し、行動しながら、
1年間かけて「自分たちの言葉」にしていく。
掲示物だった学級目標が、子どもたちの会話に出てくる。
自分たちの課題を考える材料になる。
自分たちの行動を決める基準になる。
そこまでいったとき、学級目標は初めて、
「自分たちのクラスを、自分たちでつくるための道具」
になるのだと思います。
今日はこれでおしまい。


