「つい強く言ってしまい、放課後に落ち込んだ」
「同じ注意を何度もしているのに、なかなか変わらない」
「叱ったら関係が悪くなりそうで、言い出せない」
叱り方に悩むのは、子どもにとって必要な関わりを、真剣に考えているからです。ただ、「うまく叱る技術」だけで解決しようとすると、かえって苦しくなることもあります。
この記事では、叱る場面を「止める→確かめる→伝える→その後を支える」の流れで整理します。教室で大切にしたい3つの言葉を、低・中・高学年に合わせた言い換えとともに紹介します。叱った後の言い直しや、叱り方だけで解決しない場合の考え方も扱います。
叱る前に|何度言っても直らないとき、先に確かめたいこと
同じ注意を繰り返していると、言葉や声を強くしたくなります。けれど、その前に確かめたいことがあります。
- 指示が具体的で、子どもが何をすればよいか分かる言い方になっているか
- 次に何をするかの見通しを、見える形で示しているか
- 座席や時間、道具など、環境が行動をしにくくしていないか
- 疲れ、不安、友達関係など、その子の事情が影響していないか
- 課題が、その子にとって難しすぎたり長すぎたりしていないか
「できる力があること」と「今その力を使える状態であること」は、同じではありません。この切り分けをしないまま「できるのにやらない」と決めつけると、叱る言葉が人格への評価に近づいてしまいます。
叱る時の4つの流れについて

①止める
人を傷つける行動や危険な行動は、その場で止める必要があります。このとき大切なのは、短く、落ち着いた声で伝えることです。
- 「止まります」
- 「いったん手を止めます」
- 「ここで話を聞くよ。座ろう」
ここで長い説教を始める必要はありません。気持ちが高ぶっているときは、少し時間をおいてから話すほうが、子どもも聞きやすくなります。人前で長く叱ることも避け、可能なら落ち着いた場所で話します。
「怒る」と「叱る」の違いは、検索でもよく調べられる点です。整理すると、怒るは教師の苛立ちや焦りなどの感情が前面に出た状態です。叱るは、子どもの安全や成長のために、何が問題で次にどうするかを伝える関わりです。自分が感情的になっていると気づいたときは、一呼吸おく、他の先生に声をかけて代わってもらうなど、いったん離れる選択も有効です。
なお、学校教育法第11条では体罰が禁止されています。
叩く、つかむなどの身体的な行為や、人格を傷つける言葉は、指導として認められません。
②確かめる|事情を聞いてから伝える
止めた後は、結論を急がずに事情を聞きます。教師が一方的に決めつけず、子どもの言葉で説明する時間をとると、その後の指導も受け止めやすくなります。
- 「何があったか、教えてくれる?」
- 「そのとき、どんな気持ちだった?」
- 「今、始めにくい理由はある?」
複数の子どもが関わる場合は、可能な限り別々に話を聞きます。子どもによっては、本当のことを言いにくい場面もあります。言い分を急がずに聞くことが、状況の正確な把握につながります。
③伝える|人ではなく行動を、次の一歩とセットで
伝えるときは、「あなたはダメだ」ではなく、「この行動は直そう」と、行動に焦点を当てます。さらに、代わりの行動を一つだけ示します。
- 「ちゃんとして」→「先生が話している間は、手をひざに置いて、前を見ようね」
- 「何度言ったら分かるの」→「さっきの注意をもう一回確かめよう。まず、何をするんだっけ?」
- 「わざとやっているの」→「今、どうしてそうしたのか教えてくれる? 次はどうしたらいいか、一緒に考えよう」
- 「どうしていつもそうなの」→「友達を押したことは危ないから、やめてほしい。嫌だったときは、言葉で『やめて』と伝えよう」
一度に直すことは一つに絞ります。たくさん伝えると、子どもは何をすればよいのか分からなくなるためです。
子どもに届けたい3つの言葉(学年別の言い換え)
ここからは、大切にしたい3つの言葉を、学年の発達に合わせた形で紹介します。どの言葉も、教師の気持ちを一方的に押しつけるためのものではなく、子どもが「自分は見放されていない」と受け取れるように使います。以下は一例ですので、先生が普段使われている言葉に置き換えてお使いください。

① 嫌いで叱っているわけではない
子どもは、叱られると「先生に嫌われた」と受け取ることがあります。行動は直してほしくても、その子自身は大切に思っていることを、言葉にして伝えます。
学年別の言い換え例
- 低学年:「先生は、あなたのことを嫌いだから言っているんじゃないよ。あぶないから、止めたんだよ」
- 中学年:「先生は、あなたを大切に思っています。友達が悲しい思いをしないように、直してほしいところを伝えます」
- 高学年:「あなたを否定したいわけではありません。この行動は直したほうがいい、という話をしています」
ただし、「大切に思っている」と伝えたからといって、強すぎる叱責が許されるわけではありません。まず行動を止めた理由を、具体的に添えます。
② あなたにはできる力があると思っている
期待を伝える言葉は、子どもを支える力になります。ただし、「できるはずなのに」という言い方になると、プレッシャーとして伝わることがあります。期待は、具体的な「次の一歩」や「一緒に確かめる」とセットにします。
学年別の言い換え例
- 低学年:「前に、自分でできたことがあったね。今日も、はじめのひとつだけやってみよう」
- 中学年:「あなたには、できる力があると先生は思っています。どこからならできそうか、教えてくれる?」
- 高学年:「あなたの力なら取り組めると思うから、伝えています。今、何が引っかかっているのか、聞かせてください」
③ できることをしないままだと、成長につながりにくい
この言葉は、使い方に特に注意が必要です。以前できたことでも、その日の疲れや不安、見通しのなさによって、取り組めないことがあります。そのため、「わざとやっている」と最初から決めつけず、事情を確かめた後に、必要な行動を伝える言葉として使います。
学年別の言い換え例
- 低学年:この言葉は使わず、「もう一回、やってみよう。先生もそばにいるよ」とやり直しを促す
- 中学年:「やり方が分かっていることをやらないままだと、せっかくの力がのびにくくなるよ。まず一つだけ、やってみよう」
- 高学年:「できる力があるのに使わないままだと、成長のチャンスを逃してしまいます。使えない理由があれば教えてください。なければ、ここから一つやってみましょう」
3つの言葉に共通するのは、「あなたを見放していない」というメッセージと、「次にどうするか」という具体的な示し方がセットになっていることです。
叱った後|関係を戻す、言いすぎたときの言い直し
叱った後は、子どもとの関係を日常に戻す時間も大切です。次の日も普段どおりに声をかける、叱った後で行動を直せた場面があれば、短く認める、といった関わりです。わざとらしくならないよう、事実を具体的に伝えます。
つい言いすぎてしまったときは、落ち着いてから言い直します。ここで押さえたいのは、「言い方を謝ること」と「必要な指導を取り下げること」は別だという点です。
言い直しの例
「さっきは、大きな声で言いすぎました。そこは先生が直します。ただ、友達を押すことは危ないので、やめてほしいんです。次は、どう伝えたらいいか、一緒に考えたいと思います」
教師自身の言い方を振り返って謝りつつ、安全や人を傷つけない行動についての指導は、落ち着いて伝え直します。この姿勢は、子どもにとって、うまくいかなかったときの立て直し方を学ぶモデルにもなります。
叱り方だけで解決しないとき
叱り方を工夫しても、同じ行動が続くことがあります。そのときは、言葉を強くするのではなく、背景を探る方向に切り替えます。
- いつ、どこで、誰と、何があったかを、短く記録する
- 起きやすい場面(時間帯、課題、友達関係など)に傾向がないかを見る
- 学年主任、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、スクールカウンセラーなどに相談する
からかいや排除、力の差がある行為が続く場合は、単なる「叱り」の範囲を超えます。一人で抱えず、学校として組織的に対応してください。
叱り方 よくある質問
叱ると嫌われそうで、注意するのが怖いです。
その不安は自然なものです。ただ、安全や人を傷つけない行動に関わることは、伝える必要があります。「行動」と「その子自身」を分け、「次にどうするか」を一緒に示すことで、関係を保ちながら指導することができます。
感情的に叱ってしまいました。どうすればよいですか?
落ち着いてから、言い方については言い直し、必要な指導は改めて伝えます。「さっきは言いすぎました」と、短く伝えれば十分です。それを繰り返し感じるようなら、一人で抱えず、同僚に相談してください。
同じ子ばかり叱ってしまいます。
叱る場面が多い子は、その子自身が困っている可能性もあります。叱る場面以外にも、できていることを見つけて短く伝える機会を意識して増やします。あわせて、前述の「環境・見通し・事情」の確認も有効です。
おわりに|叱ることは、関係を切ることではない
叱る場面は、教師にとっても心が重くなる時間です。うまくいかなかった日は、「自分の叱り方は間違っていたのでは」と、後から振り返ってしまうこともあるでしょう。
けれど、叱ることは、関係を切ることではありません。止める、確かめる、伝える、そして関係を戻す。その流れの中に、子どもへの期待と配慮を込めることができます。まずは、明日一つだけ、「ちゃんとして」を具体的な言葉に変えてみてください。
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