2026年8月24日、教員コミュニティ『ジーニー』では、オンラインイベント「けテぶれ実践体験会 ~漢字から始める『自走する教室』づくり~」を開催しました。
今回のテーマは、子供たちが「先生に言われたから勉強する」のではなく、自分で考え、学び、振り返り、次の行動を決められるようになるための学習法「けテぶれ」です。
実際に教員自身が漢字学習を体験しながら、「けテぶれとは何なのか」「どうすれば子供たちが自分から学ぶようになるのか」を考える時間となりました。
1.「けテぶれ」とは?自分で学ぶ力を育てる学習法
「けテぶれ」は、葛原祥太氏(葛原学習研究所)が考案した学習のフレームワークです。
名前の通り、
- け=計画
- テ=テスト
- ぶ=分析
- れ=練習
という4つのステップで学習を進めていきます。
け=計画
「何をするのか」「どこまでできるようになりたいのか」を自分で決めます。
最初から立派な計画を立てる必要はありません。
「今日は漢字をやる」
「ちょっと眠いけど頑張る」
といった簡単なものでも構いません。
テ=テスト
まずは自分の現在の力を知るために、実際に問題に取り組みます。
「たぶんできる」ではなく、まずやってみる。
ここで自分の得意・不得意を知ることが、次の「分析」につながります。
ぶ=分析
テストの結果を見ながら、
「何ができたのか」
「どこを間違えたのか」
「なぜ間違えたのか」
「次はどうすればいいのか」
を自分で考えます。
れ=練習
分析した結果をもとに、自分に必要な練習を行います。
つまり、「先生から与えられた練習をする」のではなく、「自分に必要な練習を自分で決める」というのが大きなポイントです。
このサイクルを繰り返すことで、子供たちは少しずつ「自分で学ぶ方法」を身につけていきます。
2.なぜ「漢字」から始めるのか?
今回の実践体験会では、「漢字」を題材にして、けテぶれの考え方を体験しました。
漢字学習は、けテぶれのサイクルを体験するのに適しています。
例えば、
「この漢字は書けるかな?」
↓
「実際にテストしてみよう」
↓
「どこを間違えた?」
↓
「次はどう練習すればいい?」
という流れを、比較的シンプルに作ることができます。
また、漢字は「できた・できなかった」が分かりやすいため、子供自身が成長を実感しやすいというメリットもあります。
漢字を覚えることだけが目的ではありません。
漢字学習を入り口にして、「自分の学び方を自分で考える力」を育てていく。
そこに、けテぶれを取り入れる大きな意味があります。
3.教員が実際に「漢字けテぶれ」を体験!
体験会では、参加した教員が子供の立場になって、実際に漢字テストに挑戦しました。
出題されたのは、
「添乗員(てんじょういん)」
「渓流(けいりゅう)」
など、大人でも「読めるけれど、いざ書くとなると難しい」という漢字です。
チャットには、
「渓流が書けそうで書けない!」
「自信がない……」
といった声も。
普段は「テストをする側」の教員が、今回は「テストを受ける側」になったことで、子供たちが感じている緊張感や、「間違えたくない」という気持ちを実感する機会にもなりました。
そして、ここからが「けテぶれ」の重要なポイントです。
テストをして終わりではありません。
その結果を「ぶ=分析」します。
4.「分析」が子供の学びを変える
今回の体験では、テストの結果を次の3つの視点から振り返りました。
プラス(+)
できたことや、うれしかったことを書きます。
例えば、
「4問正解できた」
「自信がなかった『添乗員』が書けた」
などです。
できなかったことだけを見るのではなく、自分ができたことにも目を向けます。
マイナス(-)
間違えたところや、うまくいかなかったところを具体的にします。
例えば、
「『渓』の形を間違えた」
「似た漢字と混同していた」
など。
単に「間違えた」で終わらせず、「どこで間違えたのか」まで考えることがポイントです。
矢印(→)
分析をもとに、次にどうするのかを決めます。
「間違えた漢字を3回練習する」
「次は全問正解する」
など、自分で次の行動を決めます。
この「分析→次の行動」を自分で決める経験が、子供の主体的な学びにつながっていきます。
5.「最低限のライン」と「上限を決めない仕組み」
今回の実践では、子供たちが自分から学ぶための工夫についても紹介されました。
最初は「最低限できればOK」にする
けテぶれを始めたばかりの子供に、いきなり完璧な計画を求める必要はありません。
計画の欄に「やる」と書くだけでもいい。
「眠いけど頑張る」と書いてもいい。
まずは「これくらいできればOK」という最低限のラインを示すことで、子供たちが安心して取り組めるようになります。
「ちゃんと計画を書かなければいけない」と考えてしまうと、それだけで学習へのハードルが上がってしまいます。
最初は小さく始めることが大切です。
できる子には「もっとやっていい」という余白をつくる
一方で、意欲の高い子供たちには、さらに挑戦できる仕組みを用意します。
例えば、50問100点満点の漢字テストで、関連する熟語や応用的な表現を書いた場合に「プラス点」を加えるという方法です。
実際に、50問のテストで434点を取った子供の事例も紹介されました。
「100点を取ったら終わり」ではなく、「もっとやっていい」となることで、子供たちは自分から語彙を広げていきます。
これは、できる子供の学びを止めないための工夫でもあります。
6.「テぶれけ」という子供の発想
体験会では、さらに興味深い実践例も紹介されました。
「計画を立てるのが難しいから、先にテストをやってみる」
という子供が、自分なりに「テスト→分析→練習→計画」という順番で取り組み始めたそうです。
いわば「テぶれけ」です。
一見すると、決められた順番から外れているようにも見えます。
しかし、ここには大切な意味があります。
「けテぶれ」という方法そのものを目的にするのではなく、自分に合った学び方を子供自身が考え始めているからです。
最終的に目指したいのは、「けテぶれを正しくできる子」ではありません。
「自分に合った学び方を自分で考えられる子」です。
7.教員から寄せられた質問
体験会の後半では、実際に学校現場で導入する際の疑問について、参加者からさまざまな質問が寄せられました。
Q.1年生など低学年からでもできますか?
できます。
実際に低学年から取り組んでいる実践もあり、発達段階に合わせて内容をシンプルにすることがポイントです。
最初から完璧な「計画・テスト・分析・練習」を求めるのではなく、できるところから少しずつ始めていきます。
Q.子供自身に丸付けをさせる意味はありますか?
自分で正解・不正解を確認すること自体が、大切な学習になります。
例えば、
「ここは出ているのか?」
「この漢字の形は合っているのか?」
と細かく確認することで、自分の学習を自分で見る力が育ちます。
教師はすべてを採点するのではなく、必要に応じて「丸付けが正しくできているか」を確認する立場になります。
結果として、教師の採点負担を減らしながら、子供自身が学習に関わる時間を増やすことにもつながります。
Q.宿題や家庭学習にも使えますか?
使えます。
例えば、学校で漢字テストをした後、
「自分はどの漢字が苦手だったのか」
「家では何を練習すればいいのか」
を自分で分析し、家庭学習につなげることができます。
「先生に出された宿題をやる」から、「自分の苦手を克服するために勉強する」へ。
宿題の意味そのものを変えていくこともできます。
8.「自走する教室」をつくるために
今回の体験会を通して見えてきたのは、「けテぶれ」は単なる漢字学習の方法ではないということです。
計画する。
やってみる。
振り返る。
次の方法を考える。
そして、もう一度やってみる。
このサイクルを子供自身が回せるようになることで、「先生がいないと勉強できない」という状態から、「自分で学び続けられる」という状態へ近づいていきます。
もちろん、最初から子供たちがすべて自分でできるわけではありません。
教師が教え、支え、見守りながら、少しずつ「自分でできる部分」を増やしていく。
それが、けテぶれを活用した「自走する教室」づくりの大切なポイントです。
9.教員コミュニティ『ジーニー』が目指す場所
今回の「けテぶれ実践体験会」を開催した教員コミュニティ『ジーニー』では、授業づくりや学級経営だけでなく、教員自身のキャリアや働き方、AI活用、副業など、幅広いテーマについて対話しています。
教員として働いていると、職員室ではなかなか話せない悩みや、「こんなことをやってみたい」というアイデアを抱えることもあります。
ジーニーでは、そんな教員が立場や学校を越えてつながり、実践を共有し、お互いに学べる場をつくっています。
今回のけテぶれのように、現場で実践してみたことを持ち寄り、
「やってみたらどうだった?」
「ここはうまくいかなかった」
「こう変えたらうまくいった」
と対話できることも、コミュニティの大きな価値の一つです。
10.まずは「漢字1文字」から始めてみよう
「子供たちが自分から学ぶようになってほしい」
そう願っている教員は多いのではないでしょうか。
そのために、いきなり授業全体を変える必要はありません。
まずは漢字1文字。
まずは計画の1行。
まずはテストの1問。
そして、「どうだった?」と子供自身に問いかけてみる。
小さな振り返りを積み重ねることで、少しずつ「自分で学ぶ」という感覚が育っていきます。
今回の「けテぶれ実践体験会」が、2学期の授業づくりや学級経営を考えるきっかけになればうれしく思います。
教員が「教える」だけではなく、子供たちが「自分で学べる」教室へ。
『ジーニー』では、これからも教員同士が実践を共有し、学び合える機会をつくっていきます。
けテぶれを実践してみたい先生、子供たちの主体的な学びについて考えてみたい先生は、ぜひ一緒に学んでいきましょう。
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