2学期が始まると、学校中が一気に運動会モードへと切り替わります。
まだ暑さの残る運動場に出て、隊形移動を教え、ダンスや演技を仕上げていく毎日。毎日必死に練習を進めているはずなのに、振り返ってみると、なぜか「うまくいかなかったこと」ばかりが思い浮かぶことがあります。
隣のクラスはもうきれいに並べているのに、自分のクラスだけ遅れている気がする。
子どもが話を聞いてくれず、つい大きな声で注意してしまった。
学年の先生方に迷惑をかけていないか、常に周りの目が気になってしまう。
周りの先生と比べると、自分の指導力のなさに落ち込んでしまう。
特に若手教員ほど、このように自分を厳しく振り返ってしまいやすいです。もちろん、練習を振り返り、改善していくことは大切です。しかし、運動会の指導で不安を感じるのは、先生の力不足だからではありません。広い運動場、残暑、大きな音や他学年の視線など、練習は子どもにとっても先生にとっても負荷の大きい環境で行われます。うまくいかない日があるのは、ごく自然なことです。
揃わなかったことだけで、練習を終わらせなくて大丈夫です。この記事では、運動会指導で不安を感じたときに大切にしたい視点を整理していきます。
1. はじめに|揃わないことに焦る先生へ
運動会の練習期間中、多くの先生がこんなことを感じています。もっと早く隊形が揃うようにしたい、大きな声で注意することが増えてしまった、去年の担任と比べられている気がする。
こうした気持ちが出てくるのは、それだけ子どもたちと本気で向き合っているからです。
隣のクラスより遅れている気がして、焦ってしまう。そう感じることは、決して珍しいことではありません。教室での授業と違い、運動場は視界が広く、周りには他学年の姿も常にあります。
そうした環境だからこそ、子どもの集中が切れたり、指示が一度で通らなかったりするのは、ある意味で当たり前のことです。
この記事では、練習期間を少しでも軽い気持ちで過ごせるように、大切にしたい視点を整理していきます。
2. 若手教員ほど「揃っていない部分」ばかり見えてしまう
若手教員は、とても真面目です。だからこそ、練習を振り返るとき、どうしても次のようなことに目が向きやすくなります。
隊形の列がまっすぐ揃わなかった。
移動の合図を出したのに、数人が違う方向に動いてしまった。
静かに待つ場面で、おしゃべりを止められなかった。
自分の声かけが弱くて、子どもを動かせなかった気がする。
こう感じること自体は、悪いことではありません。それだけ子どもたちの姿をよく見ようとしてきた証拠です。何も見ようとしていなければ、課題にも気づきません。
ただし、できていない部分ばかりを見続けると、毎日の練習指導は苦しいものになります。大切なのは、揃っていない部分と同じくらい、昨日より良くなったことや少し変わったことにも目を向けることです。
3. 運動会指導で大切にしたい3つの視点
練習を振り返るときは、次の3つの視点で見てみると、気持ちも実践も少し楽になります。

① 子どもの変化を見る
大きな完成度よりも先に、小さな変化に目を向けてみてください。
合図を聞いてから動けるようになった。友達の動きを見て合わせようとしている。失敗してもすぐにやり直せるようになった。こうした変化は、とても小さいものかもしれませんが、集団づくりの中では大切な土台です。子どもの成長は、ある日突然の完成として現れるのではなく、毎日の小さな変化の積み重ねとして現れます。
この視点で使いやすい声かけの例
- 「昨日より5秒早く並べたね」(変化を数字で伝える)
- 「さっき、自分から気づいて動けていたね」
- 「友達の動きをよく見て、合わせようとしていたの、先生見ていたよ」
② 自分の指導を見る
子どもの変化だけでなく、先生自身の変化にも目を向けてみましょう。
説明を短く区切れるようになった。注意する前にひと呼吸置けるようになった。
子どもの様子を見て指示を変えられるようになった。
練習初日の自分と比べると、指導の引き出しは確実に増えているはずです。
この視点で使いやすい声かけの例
- 「もっとまっすぐ!」ではなく「前の人の背中を見て。それだけでいいよ」
- 「ちゃんとして」ではなく「まず、体の向きだけ直してみよう」
- 「今のはここまでOK。次はこの一点だけ直そう」
③ 積み重ねを見る
特別に大きな成果が出なくても、先生は毎日、練習の場に立ち続けています。
暑い日にも子どもたちを集めた。うまくいかない日も、次の日また声をかけた。
この「続けてきたこと」には、大きな意味があります。
この視点で使いやすい声かけの例
- 「あと2回で終わりです」(見通しを先に伝える)
- 「今日はここまでできたら十分だよ」
- 「昨日もできていたね。今日はもう一歩」
完成度ではなく、昨日からの前進を見る。
そうした視点を持つだけで、練習の見え方は少しずつ変わっていきます。
4. これからの学級経営に持っていきたいものを一つ見つける
練習を振り返るとき、全部を改善しようとすると苦しくなります。
あれも直さなきゃ、これもできていなかった、と考えてしまうと、夏の疲れも重なって気持ちが余計に沈んでしまいます。
だからこそ、改善点をたくさん探すよりも、これからの学級経営に持っていきたいものを一つ見つけるくらいでよいのです。見通しを先に伝えるやり方は続けたい。できたことを言葉にする習慣は続けたい。一人で抱え込まず学年に相談する姿勢は続けたい。運動会指導の振り返りは、「できなかったこと探し」ではなく「これから残したいもの探し」です。

5. 練習がうまくいかない日の簡単チェックリスト
すべてに答える必要はありません。気になるものを一つ選ぶだけでも十分です。
- 説明が長くなり、立ったまま待つ時間が延びていないか
- 暑さや疲れで、体力の限界が来ていないか
- 一度の指示に、2つ以上の要求を詰め込んでいないか
- できていない部分だけでなく、できた部分も伝えているか
揺れているのは崩れではなく、積み重ねている途中です。
⚠️ 練習を切り上げる判断は、先生の甘さではありません
日本スポーツ協会の熱中症予防運動指針では、暑さ指数(WBGT)31℃以上は運動原則中止、28〜31℃は厳重警戒とされています。
「今日はWBGTが高いので、隊形確認だけにしませんか」と学年に相談できる先生は、指導力がない先生ではありません。子どもの安全を守るための、根拠に基づいた判断です。

6. 運動会の経験は、2学期の学級経営につながる
運動会の練習で身につけた「小さな変化を見取る力」や「重点を絞って伝える力」は、そのまま2学期の学級経営にもつながっていきます。集団が揺れる時期を経験したことで、子どもの疲れや落ち着きのなさに焦らず、どっしりと構えられるようになります。運動会は特別な行事ではなく、日々の積み重ねの延長線上にあります。

7. おわりに|揃わなかったことだけで終わらせなくていい
運動会が終わると、揃わなかった部分やうまくいかなかった場面が思い浮かぶかもしれません。
それは自然なことです。でも、この期間、先生は確かに子どもたちと向き合い続けてきました。
毎日練習の場に立ち続け、暑さの中でも根気強く声をかけ続けてきました。
続けてきたことの中に、次につながる力があります。
運動会指導、本当におつかれさまです。
まずは、ここまで向き合ってきた自分自身にも、少し目を向けてあげてください。
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