体育の授業で、こんな子いませんか。
ボールが怖くて、後ろに下がってしまう子。
水泳が苦手で、プールサイドで見ているだけの子。
運動が得意な子に遠慮して、最初から諦めている子。
「参加はしているけど、本当に学んでいるのかな」
そう感じながらも、授業の流れの中で、ついその子への関わりが後回しになってしまう。
わたしも、そういう時間をたくさん過ごしてきました。
でも、ICTを授業に取り入れてから、見えていなかったものが見えるようになってきました。
「できた・できない」だけでは捉えられなかった、その子の学びが記録に残るようになったんです。
この記事では、体育でのICT活用を「撮影」で終わらせず、
苦手な子も含めて一人一人の学びを見取るための考え方と実践をお伝えします。
「とりあえず動画撮影」になっていませんか?体育×ICTの落とし穴
GIGAスクール構想により、一人一台端末が当たり前の時代になりました。
国語や算数だけでなく、体育でもICTを活用することが求められるようになっています。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
「ICTを使うこと」が目的になっていませんか?
端末は配られた。でも「何のために使うか」言えますか?
一人一台端末が整備されて、体育の授業でもタブレットを使う場面が増えてきました。
動画撮影、振り返りシート、チームの作戦ボード。活用の幅は広がっています。
スポーツ庁が2021年に実施した全国調査によると、
体育授業においてICT活用に取り組んでいる学校はすでに56%にのぼっています。
(出典:スポーツ庁「児童生徒の1人1台のICT端末を活用した体育・保健体育授業の事例集」2021年)
ただ、同調査で最も多かった活用方法は
「見本動画や教師のプレゼンテーション」で88.0%。
次いで
「振り返りや課題の入力」が33.4%でした。
つまり、体育でのICT活用の大半が
「動画を見せる・撮る」に偏っているということです。
「使っているけど、何のために使っているかわからない」
そんな状態になっていないか、一度確認してみてほしいです。
見返されない動画。それ、本当に誰かの「学び」になっていますか?
体育でのICT活用といえば、真っ先に「動画撮影」が思い浮かぶと思います。
フォームを確認する、動きを振り返る。それ自体は悪くありません。
でも、撮影して終わり。長時間の動画を撮って、見返さない。
そうなってしまっているなら、ICTの価値は半分も活かせていません。
ICTが本当に力を発揮するのは「撮影」ではなく「分析」の場面です。
「ICTを使っても授業が変わらない…」と悩む先生が見落としていること
ICTを導入しても、「授業の質が変わった実感がない」という先生は少なくありません。
その理由は、ICTに対する根本的な認識にあることが多いです。
実は、文部科学省もこう指摘しています。
「育成すべき資質・能力を十分に意識しない実践が行われることにより、ICT等のツールが役割を果たすことなく、深い学びに繋がっていない例も見られる」
(出典:文部科学省「デジタル学習基盤に係る現状と課題の整理」令和6年9月)
「使うこと」が先に立ってしまい、「何のために使うのか」が後回しになっている。
これは、体育に限らず全教科共通の課題として、国が認識していることなんです。
「跳べた・跳べない」を見るだけなら、ICTはいらない
「跳び箱を跳べたかどうか」
「逆上がりができたかどうか」
できた・できないだけを見るなら、ICTの価値は半分も活かせていません。
技能の習得は、もちろん大切です。
でも、体育科の評価には
「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」も含まれています。
「できたかどうか」だけを見ていると、
苦手な子の学びは永遠に見えてきません。
体育が苦手な子の「見えない努力」、見逃していませんか?
体育の授業で、本当に見取りたいのはこういうことではないでしょうか。
- 何度失敗しても諦めずに挑戦したこと。
- うまくできない自分なりに、工夫を重ねたこと。
- 友達のプレーを見て、言葉でアドバイスを伝えようとしたこと。
- チームのために、自分の役割を考えたこと。
こういった「見えにくい学び」こそ、インクルーシブな授業づくりの核心です。
苦手な子も、得意な子も、それぞれの「学び」がある。
ICTは、その学びを記録し、見取るための道具になります。

「一人一人を見取る暇がない!」を解決する、ICTを使った新しい評価のカタチ
ICTを授業に取り入れることで、先生自身の仕事も楽になっていきます。
「子どもの学びを見取る」ことと「業務を効率化する」は、実は同時に達成できるんです。
所見の時期に焦らない。毎時間の「学び」が自動で貯まる仕組み
毎時間の振り返りをノートに書かせると、回収・確認・返却に時間がかかります。
Googleフォームを使えば、子どもが入力した項目をスプレッドシートへ自動集約されます。
たとえば、こんな項目を設定してみてください。
・今日できるようになったこと
・次に挑戦したいこと
・友達からもらったアドバイス
・自分が友達へ伝えたアドバイス
・チームで工夫したこと
このデータが、評価にも、通知表の所見にも、次時の授業づくりにもそのまま活かせます。
子どもの言葉が記録として残るから、学期末に慌てることもなくなります。
目立つ子だけでなく、静かな子の「つぶやき」までしっかりすくい取る
授業中、先生はすべてのグループを同時に見取ることはできません。
どうしても、目立つ子・声の大きい子の言動が記憶に残りやすくなります。
でも、音声や動画で振り返りを残すことで、
その場では気付けなかった子どもの対話、仲間への声かけ、試行錯誤を、
後から丁寧に見取ることができます。
「あの子、こんなことを考えていたのか」
そういう発見が、授業後の振り返りで生まれてきます。
すごい!」「上手!」で終わらせない。子どもの思考を引き出すしかけ
ここからが、この記事の本題です。
文部科学省は、ICT活用についてこう述べています。
「ICTの活用は知識及び技能の習得のみならず、児童生徒の思考、判断、表現や、学習状況の他の児童生徒との共有、学びの振り返りを行う際の有効な手段にもなります」
(出典:文部科学省「育成を目指す資質・能力と個別最適な学び・協働的な学び」)
つまり、ICTは
「技能を確認するため」だけのツールではありません。
思考・判断・表現を引き出し、記録し、
見取るための道具としても機能するのです。
ICTを「撮影ツール」から「学びを見取るツール」へ変えるために、
授業の中で大切にしていることをお伝えします。
「どこを直せばいい?」の一言で、単なる感想が「分析」に変わる
友達の動きを動画で見た後、子どもたちに聞いてみます。
「どうだった?」
すると返ってくるのが、
「すごかった」
「上手だった」
それで終わり。
これでは、思考・判断・表現にはなりません。
大切なのは、この問いです。
「どうすれば、もっとよくなると思う?」
子どもが動きを分析して、根拠を考えて、言葉にして伝える。
その過程こそが「思考・判断・表現」です。
ICTは、その素材を提供するための道具です。
「運動が苦手だから言えない…」をなくす安心感のつくり方
ここは、私らしさが一番出るところだと思っています。
体育が苦手な子は、こう思っていることがあります。
「自分はできないのに、アドバイスなんて言えない」
でも、わたしは子どもたちにこう伝えています。
「自分ができるかどうか」と
「よいアドバイスができるかどうか」は、別の話です。
友だちへのアドバイスは、自分をよく見せるためじゃない。
友だちにできるようになってほしい。
その願いを言葉にすることが大切なんです。
そして、アドバイスを受けた子も、そのまま受け入れる必要はありません。
「そのアドバイスを聞いて、自分はどう改善する?」
と考えることこそが、思考・判断・表現につながります。
苦手な子が「言えない」のではなく、
「言える場」をつくることが先生の仕事だと思っています。
見返すのはたった10秒。「もう一回見よう!」が対話を生む
動画撮影をするなら、こんなことを意識してみてください。
長時間撮影はしない。
10〜20秒程度に区切る。
何度も見返せる動画にする。
撮影が目的ではなく、分析が目的です。
「この場面をもう一回見てみよう」と言える動画が、
思考・判断・表現を生み出します。

ボール運動ではカメラを置こう。本当に残すべきは「作戦会議の1分間」
ここは少し逆張りの意見です。
ボール運動では、
動画撮影を中心にすることをあまりおすすめしていません。
試合全体を撮影しても、子どもの振り返りが
「○○さんが上手だった」
で終わってしまうことがあります。
それよりも、試合後1分間のチームミーティングを音声や動画で記録する方が、
子どもの思考や判断がよく見えてきます。
「なぜうまくいかなかったのか」「次はどうする?」という
言葉のやりとりの中に、本当の学びがあります。

「できない」で終わらせない。全員が繋がり、共に学び合う体育へ
GIGAスクール構想が目指していたのは、実はこういうこと。
「特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育ICT環境を実現すること」
(出典:スポーツ庁「児童生徒の1人1台のICT端末を活用した体育・保健体育授業の事例集」)
「誰一人取り残さない」。
これは、わたしが大切にしている理念と、まったく同じです。
できないまま単元を終える子が、クラスにいることがあります。
技能的には課題が残ったかもしれない。
でも、
その子が何を考え、誰と関わり、どんな工夫をしながら学んだのか。
そこまで見取ることができれば、
「できなかった」だけで終わる評価にはなりません。
ICTは、子どもの技能を評価するためではなく、一人一人の学びを見取るための道具です。
苦手な子が参加しやすい授業、苦手な子の学びが見える授業。
それを実現するために、ICTがあると思っています。
「誰も独りにしない体育」を目指しているなら、
ICTはそのための大切な道具のひとつになるはずです。
一人で悩まないで。明日の体育がもっと楽しくなる場所、あります
体育の授業には、まだまだ可能性があります。
「どうすれば苦手な子も活躍できるだろう」
「もっと子ども同士が学び合える授業にしたい」
そんな問いを、一人で抱え込む必要はありません。
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「こんな方法もあるんだ」
「明日の授業でやってみよう」
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一人で考える体育から、みんなで育てる体育へ。
あなたもぜひ、一緒に学び合いませんか。
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