2026年8月31日(月)、教員コミュニティ『ジーニー』で「第10回 道徳発問作成会」を開催しました。
今回のテーマは「家族愛・家庭生活の充実」。
家族という、誰にとっても身近な存在だからこそ、「当たり前」になっていることも多いテーマです。
だからこそ、どんな問いを立てれば、子どもたちが自分自身の家族との関わりを見つめ直すことができるのか。
講師の中村優輝先生と参加者が対話を重ねながら、「家族愛」という価値をさまざまな角度から考えました。
※本レポートでは、参加者のプライバシー保護のため、個人が特定される可能性のある発言や具体的な家庭事情については、一部内容を一般化・編集しています。
1.第10回を迎えた「道徳発問作成会」
今回で10回目となった道徳発問作成会。
この会で大切にしているのは、単に「良い発問を作る」ことではありません。
「正解を教える」のではなく、「問いを通して、自分自身の価値観を見つめる」。
そのために、まず教師自身が一人の人間として問いと向き合います。
参加者同士で「あーでもない、こうでもない」と意見を交わしながら、一つの発問を多角的に捉えていく。
その過程そのものが、この会の大きな魅力です。
そして今回は、学習指導要領に示される22の内容項目をめぐる探究も10回目。
大きな節目となる回になりました。
2.今の時代だからこそ考えたい「家族愛」
今回のテーマを考えるうえで、まず大切になったのが「今の時代における家族をどう捉えるか」という視点です。
多様な家族背景を前提にする
次期学習指導要領の改訂案では、内容項目の表現が「父母、祖父母」から「父母等」へと変更される見通しです。
これは、さまざまな家族の形や家庭環境を生きる子どもたちがいることを踏まえた変化ともいえます。
道徳の授業では、「家族とはこういうもの」という一つのイメージを押しつけないことが重要です。
教室にいる一人ひとりが、異なる家族背景を持っている。
そのことを前提に、「家族愛」という価値を考えていく必要があります。
3.発達段階によって変わる「家族との関わり」
同じ「家族愛」でも、子どもの発達段階によって、その目指す姿は少しずつ変化します。
- 低学年:進んで家の手伝いなどをし、家族の役に立つ
- 中学年:家族みんなで協力し、楽しい家庭をつくる
- 高学年:家族の幸せを求め、進んで役に立つ
- 中学校:家族の一員としての自覚を持ち、充実した家庭生活を築く
特に印象的だったのが、「つくる」から「築く」への変化です。
家族にしてもらうだけではなく、自分自身も家族の一員として、よりよい家庭をつくっていく。
そこには、子どもの成長とともに高まっていく「主体性」が表れています。
4.今回の中心となった「問い」
参加者からは、今回もさまざまな発問案が出されました。
その中で、対話の中心となったのが、
「友達にはしないのに家族にしてしまうのはなぜか。逆に、友達にはするのに家族にはできないのはなぜか。」
という問いです。
この問いが面白いのは、「家族には優しくしましょう」という単純な結論に向かわないところです。
私たちは、なぜ家族に対してだけ違う態度をとってしまうのでしょうか。
そして、その違いにはどのような気持ちが隠れているのでしょうか。
5.「甘え」は、信頼の裏返しなのか?
対話の中では、「家族だからこそ甘えてしまう」という人間の弱さについても考えました。
家族に対しては、つい態度が大きくなってしまう。
言葉遣いが雑になってしまう。
「家族だから許してくれる」と、どこかで思ってしまう。
こうした姿は、一見すると「甘え」に見えます。
しかし、別の見方をすれば、
「どんな自分でも受け入れてくれる」
という信頼の表れとも考えられます。
一方で、「家族に対しても、友達と同じように敬意を持って接する」という考え方もあります。
こうした異なる視点があることで、「家族だから甘えてしまうもの」と決めつけず、
「家族だからこそ、どのように相手を尊重したいのか」
という、より深い問いへとつながっていきます。
6.家族は「一番近い他者」であり、「小さな社会」
今回の対話を通して、家族についての見方も少しずつ広がっていきました。
家族とは、単なる血縁関係の集まりではありません。
ありのままの自分を受け入れてくれる場所であり、ときには弱音を吐くことのできる、安心できる関係でもあります。
一方で、どれだけ近い関係であっても、相手は「一人の人間」です。
だからこそ、
- 親切にする
- 相手を思いやる
- 感謝を伝える
- 礼儀を大切にする
- 相手を信頼する
といった、他者との関わりに必要な価値が、家族の中でも重要になります。
家族は、いわば「最も小さな社会」。
家族との関わりを考えることは、社会の中で人とどう関わるのかを考えることにもつながっていきます。
7.「当たり前」の大切さに気づく
今回の対話では、参加者から自身の家族との経験についても、さまざまな話が共有されました。
その中には、普段は意識していなかった家族との時間や、失って初めて気づいた「当たり前の大切さ」について考えさせられるエピソードもありました。
もちろん、家族との関係は一人ひとり異なります。
「家族だから大切に思える」という人もいれば、家族との関係に複雑な思いを抱えている人もいます。
だからこそ、道徳の授業で「家族に感謝しましょう」と一つの答えを押しつけるのではなく、
「自分にとって家族とはどんな存在なのだろう」
「当たり前だと思っているものには、どんな意味があるのだろう」
と、一人ひとりが自分の経験や価値観から考えられる問いにすることが大切です。
8.最後の問いは「家に帰って、何をする?」
会の最後には、
「この後、家へ帰って、家族とどんな話をしたいですか?」
という問いについても考えました。
そこからは、
- 「いつもより心を込めて『おやすみ』と言ってみる」
- 「家族にちょっとした質問をしてみる」
- 「一緒に食事をする時間を大切にする」
など、さまざまなアイデアが出ました。
どれも、大きな行動ではありません。
でも、「家族を大切にする」という価値は、こうした日常の小さな行動の中に表れるのかもしれません。
「家族愛」という価値を一つの言葉で定義するのではなく、具体的な経験や実感を通して考える。
今回の対話から、そんな道徳授業の可能性も見えてきました。
9.教師自身が「一人の人間」として考える
今回の作成会を通して改めて感じたのは、道徳の授業をつくるうえで、教師自身の実感が大きな意味を持つということです。
家族について考えるとき、教師もまた一人の家族の一員です。
自分自身が家族との関係について悩んだり、甘えたり、感謝したり、さまざまな経験をしてきています。
そうした「一人の人間としての実感」があるからこそ、子どもたちに投げかける言葉にも深みが生まれます。
今回の発問作成会は、授業の準備をするだけの時間ではありませんでした。
家族について考え、自分自身についても考える。
そんな時間になりました。
10.「職員室では話せないこと」を語れる場所
今回の会で改めて感じたのは、教員同士が安心して本音を語れる場の大切さです。
普段の職員室では、なかなか話せないこと。
授業のことだけではなく、自分自身の価値観や、人との関係についての考え。
そんなことまで安心して語り合えるからこそ、新しい視点が生まれます。
それは、教員コミュニティ『ジーニー』が大切にしている、
「職員室では話せない会話ができる場所」
という価値にもつながっています。
授業の専門性を高めるだけでなく、一人の人間として自分自身を見つめ直す。
そんな時間を、これからも大切にしていきたいと思います。
11.次回も「問い」を一緒につくります
道徳発問作成会では、これからも22の内容項目を一つずつ取り上げながら、「子どもたちの心に残る問い」を参加者と一緒につくっていきます。
今後のイベント予定
- 9月28日(月):Zoom飲み会
中村先生を囲みながら、授業や教育についてざっくばらんに語り合います。
- 9月29日(火):第11回 道徳発問作成会
21:00〜開催予定
今回のテーマは「家族愛」。
家族について考えることは、子どもたちだけでなく、私たち大人にとっても、自分自身の価値観を見つめ直すきっかけになります。
「家族を大切にする」とは、どういうことなのか。
その答えを一つに決めるのではなく、一人ひとりが自分自身の経験から考える。
そんな「問い」を、これからもみんなで探していきます。
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