イベント報告

【開催報告】第2回 共感覚ワークショップ ~「かんかくカード」で、言葉にならない感情をカタチに ~

イベント報告

1.第2回ワークショップを開催しました

学校現場や家庭、特別支援教育の場では、

「今の気持ちを言葉で教えて」
「どうして嫌なの?」
「ちゃんと理由を説明して」

と、大人が子どもに「言葉で説明すること」を求める場面があります。

しかし、自分の内側にある感覚や気持ちを、うまく言葉にできない子どもも少なくありません。

「なんとなくモヤモヤする」
「うまく説明できない」
「なぜ嫌なのか、自分でも分からない」

そんな「言葉になる前の感覚」を、どうやって表現すればいいのでしょうか。

今回の第2回共感覚ワークショップでは、そんな言葉にならない感情や感覚を、「色」「形」「線」などを使って表現する体験を行いました。

前回の第1回では「共感覚を知る」ことをテーマに、共感覚についての理解を深めました。

そして今回は、

「知る」から一歩進んで、「実際に体験してみる」

ことをテーマに開催。

共感覚アーティスト・山口葵さんが開発した「かんかくカード」を使いながら、自分の中にある感覚を自由に描いていきました。

開催概要

項目詳細
日時10月3日(土)21:30〜22:15
開催形式Zoom(オンライン)
ゲスト山口 葵さん(共感覚アーティスト)
ナビゲーターとうやさん(特別支援オープンチャット運営)
準備物紙と筆記用具、またはお絵描きができる端末(アイビスペイント等)

2.「かんかくカード」を使って、実際に描いてみる

今回のワークショップでは、「かんかくカード」をきっかけに、自分の中にある感覚を自由に表現しました。

紙と筆記用具を使う人もいれば、スマートフォンやタブレットの描画アプリを使う人も。

大切なのは、上手な絵を描くことではありません。

「自分には、今こう感じている」

という感覚を、自分なりの色や形、線にしてみることです。

特に印象的だったのが、「AIで画像を作るのではなく、自分の手で描く」ということ。

参加者からも、

「選んだカードを見て、自分で絵を描くんですね」

といった反応があり、普段とは少し違った表現方法に興味を持つ様子が見られました。

AIを使えば、イメージしたものを簡単に画像として表現できます。

一方で今回大切にしたのは、「自分の手を動かして表現する」というプロセスでした。

紙に筆圧をかけたり、線を引いたり、色を選んだり。

その一つひとつの行為を通して、自分でも気づいていなかった感覚が少しずつ外に出てきます。

「うまく描く」ことではなく、

「自分の感覚を、自分の方法で表現してみる」

ことそのものに意味がある時間となりました。

3.参加者からも、たくさんの気づきが

ワークショップ中のチャットには、参加者からさまざまな声が寄せられました。

「もやもやを色で表現できるのは良いですね。」

言葉にできない「モヤモヤ」を、色や形として外に出してみる。

それだけでも、自分の中にあった感覚を少し離れたところから見つめられるようになります。

参加者からも、こうした非言語的な表現方法について、肯定的な反応が見られました。

「実際の現場で使わせていただくことはできますか?」

また、実際の教育・支援現場で活用できるのかという質問も寄せられました。

今回の体験が、単なるワークショップで終わるのではなく、

「実際に子どもたちとの関わりに活かしたい」

という思いにつながっていることが伝わってきました。

特別支援教育だけでなく、通常学級、福祉施設、家庭など、さまざまな場面で活用できる可能性があります。

4.「違いは間違いではない」という気づきと教育・支援の場でできる3つのこと

今回のワークショップで特に大切にされたのが、

「感じ方に正解も間違いもない」

ということでした。

同じ音を聞いても、心地よいと感じる人もいれば、苦手だと感じる人もいます。

同じ色を見ても、安心する人もいれば、落ち着かない人もいる。

同じ言葉を聞いても、受け取り方は一人ひとり違います。

だからこそ、子どもが何かに対して強く反応したとき、

「どうしてそんなふうに感じるの?」
「理由をちゃんと説明して」

と、すぐに答えを求めるのではなく、

「あなたには、そう感じるんだね」

と受け止めてみる。

そこから、その子自身の感覚を理解するための対話が始まるのかもしれません。

教育・支援の場で出来ることとしては、以下のようなものがあります。

① 言葉以外の表現方法を用意する

気持ちを言葉で説明することが難しいときには、

「色で表してみる?」
「線にしてみる?」
「形にするとしたらどんな感じ?」

など、言葉以外の表現方法を選択肢として提示する。

「話してください」だけではなく、「描いてもいい」という道を用意しておくことが大切です。

② 「正しい・間違っている」で評価しない

子どもが表現したものに対して、

「それは違うんじゃない?」
「そんな色じゃないよ」

と大人の感覚で評価するのではなく、

「そう感じたんだね」
「こういうふうに表現したんだね」

と、その子の感じ方そのものを受け止める。

③ 大人自身も「感覚の違い」を体験してみる

子どもに「人それぞれだよ」と伝えるだけでなく、大人自身も自分の感覚を表現してみる。

「自分と他人では、こんなにも感じ方が違うんだ」

と実感することが、子どもへの関わり方を変えるきっかけにもなります。

5.今回のワークショップから見えてきたこと

今回の45分間の体験を通して、改めて感じたのは、

「言葉にできない=何も感じていない」

ではないということです。

言葉になっていないだけで、その人の中には確かに感覚があります。

そして、その感覚を表現する方法は、必ずしも「言葉」でなくてもいい。

色でも、形でも、線でもいい。

大切なのは、

「どう感じたか」ではなく、
「どう感じたかを、その人なりの方法で表現できること」

そのための選択肢を増やすことが、子どもたちの自己理解や自己表現を支える一歩になるのではないでしょうか。

「違いは間違いではない」

今回のワークショップは、そんな大切なことを、自分自身の体験を通して考える時間になりました。

6.もっと「感覚」を知りたい方へ

今回のワークショップをきっかけに、さらに「感覚」について学んだり、実際の教育・支援現場で活用したりしたい方は、ぜひ以下の情報もご覧ください。

山口葵さん|Webサイト

共感覚アーティスト・山口葵さんの活動はこちらからご覧いただけます。

▶︎ 山口葵 Official Webサイト

とうやさん|Voicy・特別支援教育オープンチャット

特別支援教育について、現場の先生や支援者、保護者が学び合い、対話できる場です。

▶︎ とうやさんのVoicyチャンネル

▶︎ オープンチャット「”教育現場”から学ぶ特別支援教育」

アイビスペイント

今回のワークショップでも活用された、お絵描き・イラスト制作アプリです。

▶︎ アイビスペイント(ibisPaint)

7.おわりに

今回のワークショップでは、

「言葉にできない感情にも、ちゃんと意味がある」

ということを、参加者自身が体験する時間になりました。

子どもたちの「なんとなく嫌」「うまく言えない」「モヤモヤする」という言葉の奥には、その子にしか分からない大切な感覚があるのかもしれません。

だからこそ、私たち大人ができることは、すぐに答えを求めることではなく、その感覚を表現するための「もう一つの道」を用意すること。

言葉だけではなく、色や形、線、そして一人ひとりの「感じ方」を大切にする。

そんな関わり方が、子どもたちにとって「自分のままでいていい」と思える環境につながっていくのではないでしょうか。

教員コミュニティ『ジーニー』では、これからも教育現場にあるさまざまな問いをテーマに、実践と対話を大切にした学びの場をつくっていきます。

今回参加してくださった皆さん、そして素敵な時間を届けてくださった山口葵さん、とうやさん、本当にありがとうございました。

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