「ハードルって怖い」
体育の授業で、そう言う子は少なくありません。
足がひっかかったら痛い。
転んだら恥ずかしい。
その「怖い」が、
実は挑戦を止めている原因だったとしたら。
私は今、50m走の記録と、40mハードル(4台)の記録を比べる授業をしています。
インターバルは、子どもの実態に応じて設定。
動画でフォームを確認しながら、6人前後のチームで役割をローテーションしています。
この授業で使っているのが「フレキハードル」です。
この用具ひとつで、子どもたちの表情が変わりました。
📌この記事でお伝えすること
- ハードル走でタイムが伸びない原因は、技術ではなく「怖さ」であること
- 「怖くない」環境を先につくる、という指導の順番
- フレキハードルの特徴・価格帯と、無理なく揃えていく買い方
- 記録の差・役割分担で、6人全員が学び手になる授業設計
ハードル走で「あの子はなぜ挑戦できない?」と思ったら
挑戦すれば上手くなるのに!と
私はずっとそう思っていました。
「怖い」が、子どもの体を止めていた
ハードルの前で減速する。
踏み切る足が合わない。
それを見て、私は
「挑戦しないからできないまま」だと考えていました。
でも、あるときその考え方は変わりました。
人は「失敗したらどう思われるだろう」という不安があると、
挑戦そのものを避けるようになる。
これは体育に限った話ではありませんでした。
Googleがチームの生産性を調べた大規模調査では、「このチームでは、無知・無能・ネガティブだと思われる行動を取っても大丈夫だ」と信じられる状態(心理的安全性)が高いチームほど、メンバーがリスクのある行動、つまり挑戦を避けずにできることが分かっています。裏を返せば、不安や恐怖があるほど、人は挑戦そのものを避けてしまうということです。(出典:Google re:Work「効果的なチームとは何か」を知る)
チームの中でも、授業の中でも、仕組みは同じです。
「失敗しても大丈夫」という安心がなければ、
人は挑戦しようとしません。
ハードルの前で足がすくむのも、同じ原理だったのです。
フォームを直す前に、やることがある。
それは、「怖くない」状態をつくることでした。
どれだけ丁寧にフォームを教えても、心のどこかで
「痛いかもしれない」と思っていたら、体は縮こまります。
踏み切りが小さくなる。歩幅が乱れる。減速する。
これは、技術の問題ではなく、防衛反応です。
「指導を丁寧にすれば、きっと跳べるようになる」と思っていました。
でも、恐怖心を抱えたままの子に、
どれだけ言葉で説明しても届きませんでした。
「もっと頑張れ」では動けない|フレキハードルで怖さをなくす
怖くなければ、子どもは自分から挑戦します。
指導のポイントを教える前に、まずやるべきことがあります。
「怖くない」状態を、環境の側からつくってしまうことです。
これは特別な指導技術ではなく、場や用具をどう用意するかという工夫です。
「失敗してできる安心感」が、挑戦を生む
私はハードルの授業で、フレキハードルを使っています。
ぶつかっても倒れて痛い思いをすることがなく、
「失敗しても大丈夫」という安心感の中で練習ができます。
用具を変えただけで、子どもの取り組み方が変わりました。
恐怖心がない状態になって、はじめて技術指導は意味を持ちます。
「うまくできるか」より先に、「やってみても大丈夫か」。
子どもが最初に確かめたいのは、実はここなんだと思います。
安心があってはじめて、挑戦する気持ちが生まれます。

「ぶつかっても大丈夫」そう思える道具
「フレキハードルって何?」という方のために、簡単に紹介します。
見た目は普通のハードルとほぼ同じですが、バーが左右2本に分かれていて、
脚が触れるとそれぞれが独立して倒れる(曲がる)仕組みになっています。
バーは発泡素材でカバーされていて、当たっても痛くありません。
横幅も競技用より広く作られているので、
視覚的にも「ぶつかりにくそう」と感じやすいのが特徴です。
価格は、メーカー(ニシ・スポーツ)の小学校用で1台あたりおおよそ12,000〜15,000円前後です。
高さは4段階程度に調整できるタイプが一般的で、学年や実態に応じて低い高さから始められます。
決して「安い」とは言えない金額で、学級やチームの数だけ揃えようとすると、まとまった予算が必要になります。
「全部買う予算なんてない…」と思った先生へ
「いいとは思うけど、全部揃えるのは予算的に厳しい」
そう感じる方も多いと思います。
私自身もそうでした。
でも、1年で全部揃える必要はありません。
今年は4台、来年また4台というように、少しずつ買い足していけばいい。
何年かけてでも、学校の備品として少しずつ増やしていくという発想で十分です。
全部揃うまでの間は、
普通のハードルとフレキハードルを併用する形でも構いません。
先に恐怖心の強い子たちのグループだけ
フレキハードルで練習させる、という使い方もできます。
体育は、どんな指導をするか、どんな声をかけるかが大切だとよく言われます。
それは間違いありません。
でも私は、
「どの道具を使うか」で、授業の質そのものが大きく変わるとも感じています。
どれだけ声かけを工夫しても、用具そのものが「怖い」を生み出していたら、
効果は限定的になってしまいます。
だからこそ、道具選びは、指導法と同じくらい慎重に考えたいところです。
ハードル走の指導で、教える前に子どもに見せたいもの
答えを教えるより、問いをつくる。
教える前に、子どもが「なぜ?」と考え始める
50m走のタイムと、40mハードル(4台)のタイム。
この2つを比べると、必ず差が出ます。
「なんでこんなに差があるんだろう」
その疑問こそが、子どもが自分の課題に向き合う入り口になります。
「タイムを縮めたい」という気持ちは、どの子にも共通してあります。
だからこそ、記録という客観的な数字は、
苦手意識を横に置いて授業に向かわせてくれます。
先生が「ここが悪い」と指摘するのではなく、
子ども自身が数字を見て、自分で気づく。
この順番を、私は大事にしています。
「ちゃんと走ってるつもり…」その違和感を動画で確かめる
インターバルは、クラス全員同じ設定にはしません。
子どもの実態に応じて、歩幅やリズムに合った距離に調整します。
そして、自分の走りを動画で確認する。
「思っていたより、体が起きていない」「踏み切る足がバラバラ」。
言葉で説明されるより、映像で見たほうが、子どもは何倍も納得します。
学習指導要領でも、体育は技能の習得だけでなく、
自分やチームの課題を見つけ、解決の仕方を工夫する力を育むことが重視されています。
記録の差に気づき、動画で確かめ、自分で工夫する。
この一連の流れそのものが、教科として育みたい力と重なっています。
スポーツ庁は、学習指導要領解説体育編の内容をもとに、具体的な授業づくりのポイントをまとめた「小学校体育(運動領域)指導の手引」を公開しています。陸上運動系(ハードル走・小型ハードル走を含む)についても、技能の例示とあわせて指導のポイントが示されています。(出典:小学校体育(運動領域)指導の手引~楽しく身に付く体育の授業~:スポーツ庁)

「走るのが苦手な子」も、チームに必要とされる
「教える人」と「教わる人」を、固定しない。
「走るのが苦手だから…」と、あの子が縮こまらないために
6人前後のチームの中に、
動画撮影係、記録の記入係、友だちにアドバイスをする係をつくり、
どんどんローテーションしていきます。
撮影係は、フォームのどこがよかったかを見極める目を育てます。
記録係は、数字の変化に誰よりも早く気づく立場になります。
どの係も、走る力とは別の
「見る力」「考える力」を鍛える学びになっています。
教える子と、教えられる子にならない
アドバイス係になった子は、友だちの走りをよく見て、言葉にしようとします。
言われた子も、それを聞こうとします。
記録係になった子は、友だちのタイムの伸びを誰よりも近くで見ています。
撮影係になった子は、うまくいった瞬間を一番に見つける役目になります。
係が変わるたびに、見える景色が変わるのです。
私が大切にしているのは、「ききあえる関係」です。
話す人・聴く人という関係が、先生と子どもの間だけでなく、
子ども同士の間にもできていく。
良いアドバイスができた子、それを取り入れて走りが変わった子。
その両方を、私はその場で価値づけるようにしています。
この繰り返しが、教え合う空気をクラス全体に広げていきます。
「苦手な子だけ助ける授業」にしたくない
授業は「苦手な子だけ」に何かをするのではありません。
あの子“だけ”の特別ルールにしない
ここまで書いてきた、恐怖心をなくす環境づくりも、
記録の差で問いを生む仕組みも、全員に役割がある設計も。
どれも「苦手な子」だけに向けたものではなく、
クラス全員に対して同じように用意しているものです。
学習指導要領では、運動が苦手な児童・意欲的でない児童への配慮の例が、領域ごとに具体的に示されるようになりました。文部科学省のQ&Aでも、体力や技能に個人差がある中で、すべての子どもが運動の楽しさに触れられるようにするための工夫として、この趣旨が説明されています。(出典:平成29年改訂の小・中学校学習指導要領に関するQ&A(保健、保健体育に関すること))
私は特別なことをしているつもりはありません。
「全員が挑戦できる状態をつくる」ことを、
仕組みの中に組み込んでいるだけです。
怖くない環境をつくる。
比べられる数字をつくる。
誰もが担う役割をつくる。
特別な指導技術がなくても、
環境と仕組みを整えるだけで、多くの子が変わっていきます。
技術を教える前に、「怖い」に気づく。
環境を変え、子ども自身が考え、仲間と学ぶ。
それだけで、「ハードルが怖い」と言っていた子が、
自分からハードルの前に立つようになりました。

以前に苦手な子を繋げる工夫について書いたブログはこちらです

「あの子への関わり、これでよかったのかな」と悩んでいる先生へ
「あの子に、どう関わればいいかわからない」
「良かれと思ってやったことが、逆効果だった」
「これでよかったのかな、とずっとモヤモヤしている」
そのモヤモヤを、一人で抱えなくていいです。
悩んでいるのは、あなただけではありません。
全国に、同じように悩みながら子どもと向き合っている先生がいます。
でも、つながった先生たちには変化が起きています。
一人で考えていたことに、仲間が答えをくれた
失敗を話したら、同じ経験をした先生がいて救われた
明日の授業が、ちょっと楽しみになってきた
一人で頑張る毎日が、つながる毎日に変わる。
それだけで、明日の朝の感じ方が変わります。
わたしたちが運営するオープンチャット
「Bridge」は、
体育と学級経営をテーマに、
全国の先生たちが言葉を交わしているコミュニティです。
「これでよかったのかな」を持ち込んでいい場所。
あなたのことを必要としている仲間が、ここにいます。
ぜひ、一緒に話しましょう。
待っています。
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私が教員コミュニティ「ジーニー」と出会って変わった実話

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