低学年の体育で、固定遊具をどう扱っていますか?
「あれは休み時間に遊ぶもの」
「事故が心配だから、授業ではあまり使わない」
そう考えて、固定遊具を授業から遠ざけていませんか。
実は、固定遊具を使った運動遊びは、
鉄棒、マット、跳び箱、そしてボール運動まで続く
運動の基礎をつくる時間です。
しかもそれは、
体が軽くて、神経系の発達が著しい低学年のうちにしかできないことでもあります。
この記事では、固定遊具の運動遊びで育てたい力と、
導入の数分から始められる取り入れ方をお伝えします。
- 固定遊具の運動遊びを「基礎づくり」と考える視点
- 握力と、鉄棒への恐怖心の関係
- 導入の数分で触れる、無理のない取り入れ方
- 鉄棒・マット・跳び箱への接続
中学校で体育を教えていた10年間、
器械運動の授業で、何度も同じ場面に出会いました。
鉄棒に手をかけたのに、途中で手を離してしまう生徒。
マットの前で、足が止まってしまう生徒。
そのたびに「もっと頑張れ」「怖くないよ」と声をかけていました。
でも、その声かけで怖さが消えた子は、ほとんどいませんでした。
怖さの正体に気づいたのは、
小学校の先生として働き出してからでした。
中学校と小学校、
両方の現場を見たからこそ分かったことがあります。
怖さの正体は、「体を使った経験の少なさ」だった。
今のわたしは、そう思っています。
「遊び」が体育の土台、基礎となる
固定遊具の運動遊びは、
その単元で完結しなくても大丈夫です。
登り棒を最後まで登れたか。
ジャングルジムの頂上まで行けたか。
つい、そんな「できた・できない」で見たくなります。
でも、わたしが大切にしたいのは、そこではありません。
ゴールは、その運動遊びが上手になることではなく、
その後のボール運動や器械運動など、
さまざまな運動の基礎となる部分をつくることです。
登る、ぶら下がる、渡る、跳び下りる。
一つひとつの動きが、体の使い方の引き出しになっていきます。
子どもたちが自分の体を使って、あれこれ試してみる。
その中で、「いまの自分の体はどう動くのか」を知っていく。
自分たちで動きを考えること自体が、大切な学びだとわたしは思っています。
文部科学省の「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」は、学年ごとの指導内容や、中学校への接続を踏まえた計画の立て方を理解するための教師用指導資料です。低学年の「器械・器具を使っての運動遊び」の中に、「固定施設を使った運動遊び」が位置づけられています。
(出典:文部科学省「小学校体育(運動領域)まるわかりハンドブック」)
低学年だからこそできる!「握る・ぶら下がる・逆さになる」運動遊び
低学年は、体が軽いからこそ、
いろいろな動きに挑戦できる時期です。

体重が軽いうちは、ぶら下がっても、逆さになっても、
体にかかる負担が小さく、補助をする人も支えやすくなります。
友だち同士で支え合いながら、
自分の体を自由に使う経験を積めるのも、この時期ならではです。
逆に、体が重くなってから初めて鉄棒を握ると、
ケガのリスクが高くなり、補助も大変になります。
わたしが「低学年のうちに」とお伝えしたいのは、このためです。
もう一つの理由が、神経系の発達です。
古くから体育・スポーツの分野で参照されている発育曲線(スキャモンの発育発達曲線)では、
神経系は6歳頃までに成人の約90%、12歳頃にはほぼ100%に達するとされています。
リズム感や、体を器用に動かす力と深く関わる部分です。
この数字は、低学年のうちにいろいろな動きを経験させておく大切さを教えてくれます。
だから低学年のうちに、
登る、ぶら下がる、渡る、逆さになる。
いろいろな体験を、たくさん積んでおく価値があるのです。
古くから体育・スポーツの分野で参照されている発育曲線(スキャモンの発育発達曲線)では、神経系は6歳頃までに成人の約90%、12歳頃にほぼ100%に達するとされ、脳や脊髄などの発達が、体を器用に動かす力やリズム感と関わると説明されています。
(参考:東松山市「スキャモンの発育曲線」解説資料)
「鉄棒が苦手=やる気がない」ではない。握力と恐怖心の関係
鉄棒が苦手な子の多くは、
「やる気がない」のではなく
「握り続けられない」のです。
これは、わたしが現場で感じてきたことです。
握る力が足りないと、鉄棒の途中で手が離れてしまいます。
離れた経験は、そのまま「落ちるかもしれない」という恐怖心になります。
その恐怖心が積み重なって、鉄棒嫌いが生まれていくと考えています。
鉄棒の授業で初めて握る。
「ちゃんと握って!」「頑張れ!」と声をかける。
途中で手が離れて、怖い思いをする。
低学年のうちに、登り棒や雲梯でぶら下がる。
手を離さずにいられた経験が、自然と積み重なる。
鉄棒の授業では「いつもの感じ」で握れる。
鉄棒の前に、鉄棒の練習をする必要はありません。
握る・ぶら下がる経験を、遊びの中で先に済ませておくことが、いちばん安全で近道です。

体育の導入数分で始める運動遊び
固定遊具は、1時間の授業のほんの数分でいい。
1時間すべてを固定遊具の授業にする必要はありません。
何時間かに分けて、
授業の導入の数分で「今日はここで遊ぼう」と声をかける。
それだけで、子どもたちの経験は少しずつ積み上がります。
この数分で「こう動きなさい」と細かく設定しすぎないことが、わたしは大切だと思っています。
先に「触れる・経験する」を優先して、
どう動くかは子どもたちに考えてもらいます。
自分たちで工夫して動く時間が、体の使い方を育てます。
- 登る(登り棒・ジャングルジムなど)
- ぶら下がる(雲梯・鉄棒など)
- 渡る・移動する
- 逆さになる・体を支える(鉄棒・ジャングルジムなど)
- 跳び下りる
冒頭でふれた「事故が心配」という不安にも、ここでお答えします。
数分の運動遊びでも、
始める前に確認しておきたいことが3つあります。
- 事前に遊具の点検を(ぐらつき、ボルトの緩み、着地面の状態)
- 服装の確認(上着のひも、ポケットの中身、ランドセルのキーホルダー)
- 「同時に何人まで」「跳び下りる高さの上限」を最初に決める
点検の項目は、国土交通省の「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」や、各自治体の学校安全の手引にもまとめられています。
「上手にできたか」で評価する時間ではなく、
体が今どんな状態かを、子ども自身が知る時間。
そう考えると、数分でも十分に意味のある時間になります。
「遊び」が鉄棒・マット・跳び箱につながる。固定遊具で育てたい力
低学年で積んだ経験は、
中学年の器械運動で、そのまま土台になります。
低学年の「器械・器具を使っての運動遊び」は、
固定施設、マット、鉄棒、跳び箱を使った運動遊びで構成されています。
それが中学年では、
マット運動・鉄棒運動・跳び箱運動という器械運動になっていきます。
この接続の中で、固定遊具で育つ力は次のように生きてきます。
握る・ぶら下がる力は、鉄棒運動へ。
逆さになる感覚・体を支える感覚は、マットの回転や逆立ちへ。
腕で体を支える感覚は、跳び箱運動へ。
そして自分の体を思い通りに動かす力は、ボール運動を含めたあらゆる運動へ。

「導入の数分で何をすればいいか、具体的な流れが知りたい」
そう思った先生には、スポーツ庁の資料が役に立ちます。
スポーツ庁の「小学校体育(運動領域)指導の手引〜楽しく身に付く体育の授業〜」は、学習指導要領解説をもとに、単元のページと資料のページで授業づくりのポイントを示した教師向け資料です。低学年向けには「器械・器具を使っての運動遊び」を含む動画資料も公開されています。
(出典:スポーツ庁「小学校体育(運動領域)指導の手引」/小学校体育の動画資料〜器械・器具を使っての運動遊び、器械運動〜)
「体育が苦手」になる前に。遊びの中で楽しい経験をつくる
完璧な授業は、いりません。
次の体育の授業で、導入の数分だけ、固定遊具のところに行ってみてください。
「今日は、ここで好きなように遊んでみよう」
たったそれだけで、子どもたちの体は、たくさんのことを学び始めます。
登って、ぶら下がって、ときには逆さになって。
友だちと笑いながら、自分の体の使い方を知っていく。
その経験が、鉄棒の前で「やってみたい」と思える背中になります。
低学年のうちに積んだ経験は、
中学年、高学年、そして中学校へと、ずっとつながっていきます。
目の前のあの子が、体育を好きでいられる未来。
その入り口は、数分の固定遊具の時間から始められます。
「あの子への関わり、これでよかったのかな」と悩んでいる先生へ
「あの子に、どう関わればいいかわからない」
「良かれと思ってやったことが、逆効果だった」
「これでよかったのかな、とずっとモヤモヤしている」
そのモヤモヤを、一人で抱えなくていいです。
悩んでいるのは、あなただけではありません。
全国に、同じように悩みながら子どもと向き合っている先生がいます。
でも、つながった先生たちには変化が起きています。
一人で考えていたことに、仲間が答えをくれた
失敗を話したら、同じ経験をした先生がいて救われた
明日の授業が、ちょっと楽しみになってきた
一人で頑張る毎日が、つながる毎日に変わる。
それだけで、明日の朝の感じ方が変わります。
わたし自身も、一人で悩みを抱えていた時期がありました。
その経験については、こちらの記事でお話ししています。

わたしたちが運営するオープンチャット
「Bridge」は、
体育と学級経営をテーマに、
全国の先生たちが言葉を交わしているコミュニティです。
「これでよかったのかな」を持ち込んでいい場所。
あなたのことを必要としている仲間が、ここにいます。
ぜひ、一緒に話しましょう。
待っています。
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